積層構成最適化
- 「フラクタル分枝限定法を用いた積層構成最適化」
複合材料積層板は,力学的特性が積層構成に大きく依存するため,その積層構成の最適設計が必要不可欠である.実構造においては,積層板の各層の繊維配向角は0°, 45°, 90°, -45°の4種類に限定することが多い.この理由としては,製造過程上の制約や,設計に利用できる材料試験データの限定などが挙げられる.このため積層構成の最適設計は,限定された繊維配向角の組み合わせ最適化問題となる.
例えば,厚さ0.125mmのプリプレグを積層して5mm厚の積層板を作成する場合,積層枚数は40層となる.繊維配向角は0°,45°,90°,-45°の4種類に限定するので,積層構成の組み合わせは410通り,すなわち1.2×1024通りも存在する.これらの積層構成すべてを虱潰しに評価して最適解を探索する場合,ひとつの積層構成の評価が10-6秒でできるとしても全部で1.2×1018秒=380億年を要することになる.つまり,事実上すべての積層構成を総当りに評価することは不可能である.このため,効率的な積層構成の最適化手法が必要とされている.
積層板の力学的特性は積層構成に対して著しい多峰性を示すため,最適解を決定論的に導く最適化手法の確立は困難であるとされてきた.そのため従来の研究では,積層構成の最適化は遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm; GA)によって行われてきた.GAは生物の進化過程を模擬した確率的な探索手法であり,離散的な組み合わせ最適化問題に対して有効な手法である.GAを用いることにより,最適解に近い積層構成を短時間で得ることができる. しかし,GAには以下のような欠点がある.
- 問題が複雑になると正答率が低下
- 各種のGAパラメータのチューニングが必要
GAは,積層数の増大や拘束条件の導入に伴って正答率が低下してしまう.また,GAで高い正答率を得るには,交叉率や突然変異率などのGAパラメータの値をチューニングする必要がある.このため,GAで最適設計を実施しても思うように最適解が得られない場合が考えられる.そこで本研究では,確実に最適解が得られる決定論的な最適化手法の開発を行った.
本研究では, フラクタル分枝限定法(Fractal-Branch and Bound Method; FBBM) という決定論的な最適化手法を提案する.本研究では,積層構成の最適設計における設計空間が持つフラクタル構造を解明した.これにより,従来は困難とされていた決定論的な最適設計が可能となった.以下に本手法の特徴を示す.
- 分枝限定法による決定論的な最適化手法
- 枝刈りのアルゴリズムは設計空間のフラクタル構造に基づく
- 目的関数は応答曲面法により積層パラメータの2次多項式に近似
- パラメータのチューニングは不要
- 積層数Nに対して計算時間はO(1.5N) 程度
これまでに,本手法を様々な例題に適用し,その著しい有効性を示している.
Yuichiro TERADA, Akira TODOROKI, Yoshinobu SHIMAMURA,JSME International J., Series A,44,4(2001)p.490-498
Akira Todoroki, Yuichirou Terada, AIAA J,Vo.42,No.1,(2004)pp.141-148 - 「フラクタル分枝限定法による翼構造耐フラッタ性向上の積層構成最適設計」
本研究は航空機複合材料翼構造の耐フラッタ性向上の積層構成最適設計に関するものである.本研究ではフラクタル分枝限定法を用いた積層構成最適設計手法を提案し,解析的にその有効性を検証,提案手法の有効性を示した.
まず超音速域のフラッタ問題に対し,フラクタル分枝限定法が要求する解空間近似に有効となる修正応答曲面法および拡大応答曲面法を,また実機設計に必要不可欠な制約条件導入手法,少ない追加解析数により耐フラッタ性向上可能とする基底繊維配向角最適化手法を提案し,その有効性を解析的に示し,フラッタ問題に適用可能な積層構成最適設計手法を構築した.
更に,提案手法を要求する計算コストの大きさから従来手法の適用が困難であった遷音速フラッタ問題に適用し,提案手法の有効性を示した.
Yoshiyasu Hirano, Akira Todoroki, Advanced Composite Materials, 13,2,(2004)pp.89-107
Yoshiyasu Hirano, Akira Todoroki,JSME Int. J.,Series A,Vol.48,No.2, (2005),pp.65-72 - 「14面体フラクタル分枝限定法を用いた非対称積層構成最適化への拡張」
複合材料の特性は積層構成に大きく依存するため,積層構成の最適設計が必要不可欠となっている.
複合材料円筒殻等では,円筒殻全体で対称構造とみなせるため,非対称積層構成を含めて積層構成最適化を実施する必要がある
非対称積層板では3つの面内積層パラメータ,3つの面外積層パラメータに加えて,3つの連成積層パラメータが非ゼロとなる.本研究ではまず,繊維配向角が0°,±45°,90°に限定された非対称積層構成の面内/面外積層パラメータ設計空間が四面体フラクタル図形を描くことを明らかにした.また,実現積層構成の連成積層パラメータ設計空間を明らかにし,積層構成の集合が連成積層パラメータ空間で十四面体フラクタル図形を描くことを明らかにした.
さらに非対称積層板の面内/面外/連成積層パラメータのフラクタル性を利用して,非対称積層板積層構成最適化へのフラクタル分枝限定法が適用可能であることを明らかにした.
本研究では,複合材料円筒殻の座屈荷重最大化積層構成最適化問題を例に提案する手法の有効性を示した.
- 「応答曲面法を用いた複合材料構造の寸法・積層構成最適化」
複合材料構造では,軽量化を目的とした構造要素の薄肉化が図られるため,座屈破損を生じやすい.そのため,航空宇宙機,圧力容器,海洋構造といった多くの構造で,ハット型・ブレード型などの様々な断面形状を持つ補強板で補強された補強板構造として利用されている.補強板を用いることで,構造の曲げ剛性を大きく増加させることが可能であるが,一方で構造の挙動は非線形性の強いものとなる.例えば,座屈挙動の場合,構造全体での座屈だけでなく,補強板間のパネルの局部座屈,補強板のみでの局部座屈など様々なモードが存在する.そのため,構造の耐荷重を与える最小荷重の座屈モードは,構造の寸法と積層構成の両方に大きく依存する.
したがって,複合材料積層板構造の最適設計(最小重量設計)では,構造を構成する積層板の積層構成と,積層数(板厚)や構造の断面形状などの構造寸法を同時に考慮して設計することが不可欠となる.設計条件に合わせた寸法最適化と積層構成最適化の同時最適化を行うことが望ましい.
実用的な複数積層構成最適化手法を構築するため,決定論的な単一積層構成の最適化手法であるフラクタル分枝限定(FBB)法の適用範囲を拡張した.拡張したFBB法を,複合材補強パネルの積層構成最適化問題に適用し,その有効性を明らかにした.
次に,拡張したFBB法と,Krigingモデル応答曲面を用いた最適化手法を統合し,寸法・積層構成最適化手法に適用可能な新しい設計手法を構築した.
本手法は,従来手法と比較して,非常に低計算コストで重量最小化設計が可能な,最適化手法と構造解析ツールが完全に分離した実用性の高い寸法・積層構成の大域的最適化手法である.
さらに,拘束条件を複数有する問題,大規模構造問題など,様々な複合材料構造の設計に対して適用可能であり,実現可能な積層構成を直接得ることが可能である.
Masato Sekishiro and Akira Todoroki,Advanced Composite Materials, 15-3 (2006) 341-356.
Akira Todoroki and Masato Sekishiro, Composite Structures, 81-3(2007) pp.419-426. - 「CF/GFハイブリッド構造を用いた60m級大型風車翼の最適設計」
風力発電は,発電コスト削減が重要な課題であり,翼の大型化,軽量化が求められている.現在の翼の主な構造材はガラス繊維強化プラスチック(GFRP)であるが,今後主流となる60m級の翼では強度・剛性不足であり,より機械的特性に優れる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を適用したCF/GFハイブリッド構造翼の開発が期待されている.しかし,CFRPはGFRPと比べて非常に高価であり,多用すると翼の素材コスト増加が問題となる.そのため,CF/GFハイブリッド構造翼の最適化は,翼重量と素材コストを目的関数とする複数目標最適化問題となる.本論文では,複数目標遺伝的アルゴリズム(MOGA)を用いてCF/GFハイブリッド翼の最適構造の探索を行い,得られた最適構造から設計指針に関する検討を行う事を目的とする.
翼構造は外皮,シアウェブ,スパーキャップで構成され,これらの寸法を表す設計変数と目的関数の翼重量と素材コストの定義を行い,風車の設計規格IEC61400-1に準拠し,翼の強度や変形を拘束条件として最適化を行う.最適化に用いるMOGAは汎用性の高い複数目標最適化手法であるが,FEMによる翼の構造評価が多数回必要であり,膨大な計算コストが必要となる.そのため,本論文ではKrigingモデル応答曲面を用いてFEM解析値を関数近似することで計算コスト削減を図る.
Kriging法を用いずMOGAのみで最適化する場合,数万回のFEM解析が必要であるのに対し,提案手法では232回と非常に低計算コストでCF/GFハイブリッド構造風車翼の最適構造が得られた.また,得られた構造のFEM解析結果より,CF/GFハイブリッド構造の設計に関して,以下に示す指針を得た.
1)CF/GFハイブリッド構造翼の素材コストと重量におけるトレードオフ関係は,主に半径25%付近のスパーキャップにおけるGFRPとCFRPの使用割合によって決まる.
2)半径25%付近のスパーキャップは,GFRPのみで構成すると重量増加が著しくなるため,CFRPを適度に用いたほうが効果的に静的強度を向上可能である.
3)翼中央部付近は,翼厚が比較的薄いため,剛性の高いCFRPによる補強が重要であるが,使用量が多過ぎると素材コストの面でバランスが悪く,翼中部から翼端にかけてシアウェブや外皮を厚くするなどしてバランスよく座屈防止を図ることが重要である.
Yuki Kawakami, Akira Todoroki, Ryosuke Matsuzaki, Multi-objective optimization using MOGA and Kriging method for structure design of CF/GF hybrid wind turbine blade, Third Asian-Pacific Congress on Computational Mechanics, (2007.12.3-6), (Kyoto, Japan) p.291.
